2023年02月のブログ一覧
三叉神経痛・ベル麻痺・突発性難聴・メニエル氏病に共通した原因とは
あるとき何の前触れもなく、顔面に痛みが走ることがある。この痛みの正体は、きっと三叉神経痛だろう。一昔前までは顔面神経痛とも呼ばれていた。私と同年代以上の人なら、この俗称を覚えているかもしれない。顔が痛むのだからイメージとしてはまちがっていないようだが、三叉神経と顔面神経とでは、同じ脳神経(※)であっても全く別の神経なのである。
また呼び名が似ていることから、顔面神経痛と顔面神経麻痺が混同されることもしばしばあった。しかし顔面神経麻痺の主訴は痛みではなく、運動機能の異常なので、これも医学的には別の疾患だ。
顔面神経麻痺では、顔の筋肉が動かない・まぶたが閉じない・よだれが垂れるといった麻痺症状が出る。顔面神経麻痺の原因は脳腫瘍のような重大疾患の場合もあるが、その7割ほどは原因が特定できず、ベル麻痺とも呼ばれている。
ベル麻痺は自然治癒することも多いようだ。だが病院で治療するとなると、ステロイド剤の集中投与となる。けれどもそのすべてが薬で治るわけでもない。治ったとしても、それが薬の効果なのか、自然治癒なのかの見極めすらむずかしいのである。
こうやって三叉神経痛と顔面神経麻痺の両者を見比べてみると、どちらも顔面の異常であるだけでなく、いきなり発症する点も含めて、症状の成り立ちが似ている気がする。
そういえばステロイド剤の集中投与で思い出されるのが、突発性難聴とメニエル氏病である。突発性難聴はその名が示す通り、突発的に耳鳴りや耳閉といった聴覚への異常が出る疾患だ。メニエル氏病ではめまいが主訴となる。
これら突発性難聴とメニエル氏病も、はっきりとした原因はわかっていない。そのうえ突然発症するところまで、上述の三叉神経痛や顔面神経麻痺と非常に似通っているのだ。しかし医学的には、それぞれ全く違った疾患としてくくられている。
ところが前回ここでお伝えした三叉神経痛と同様、これらはみな頭蓋や頸椎1番・2番のズレによって引き起こされているのである。つまり三叉神経痛、顔面神経麻痺(ベル麻痺)、突発性難聴やメニエル氏病は、すべてズレによって引き起こされた一つの疾患群だと考えられるのだ。
ではなぜそういえるのか。答えは簡単だ。いずれの疾患も、頭蓋や頸椎1番・2番にあるズレを矯正すれば、症状が消えてしまうからである。
もちろん上記の症状が、すべてズレのせいだというわけではない。発症してからある程度の時間がたっていると、矯正の効果が全く出ないこともある。発症後すぐに矯正のチャンスがあったとしても、頸椎の矯正は急激な血流変化を起こすので、相当慎重に対処する必要がある。しかもめまいが激しい状態なら、なおさら矯正のリスクも大きくなる。そうなると、たとえズレと症状との因果関係が明白でも、施術者としてはなかなか手出しできないところが悩ましい。
では、三叉神経痛・顔面神経麻痺(ベル麻痺)・突発性難聴・メニエル氏病が同一の疾患なのだとしたら、なぜ痛みや麻痺、めまい、難聴のように全く別の症状が現れるのか。これは頭蓋や頸椎がズレる角度の微妙なちがいによって、その影響が及ぶ神経にちがいが出ることで、症状がちがってくるのだろう。
たとえば腰椎がズレたとき、腰部ではなく鼠径部やひざ、足首などの下肢に症状が出ることがある。同じズレによって、腰痛だけに留まらず、頻尿や尿失禁、便秘、下痢、生理不順といった内臓機能の異常まで現れることも多い。これと同じしくみで、頭蓋や頸椎1番・2番のズレがさまざまなパターンの症状を起こしているのではないか。
それだけではない。各疾患の主訴はちがっても、頭痛、めまい、難聴、吐き気といった症状は共通している点も重要だ。さらにみな一様に「アシンメトリ現象」が極めて悪化しているところも同じなのである。逆に「アシンメトリ現象」がやわらいでくると、それぞれの症状が改善していくことも見逃せないポイントだろう。
そして今回特に注目したいのは、脳神経の異常と「アシンメトリ現象」とは関係が深いという事実である。一例を挙げると、ベル麻痺の患者には、左の胸鎖乳突筋や左の僧帽筋に異常な緊張が見られる。これは「アシンメトリ現象」の代表的な特徴なのである。
一般的には、ベル麻痺は顔面神経だけの問題だと思われている。ところが実際には、胸鎖乳突筋や僧帽筋の支配神経である副神経の異常も大きいようだ。またメニエル氏病でよく見られる吐き気の症状も、交感神経の問題だと考えられているが、その交感神経の機能亢進の元をたどれば、副交感神経である迷走神経の異常に行き着く。この状態が、「アシンメトリ現象」をより一層悪化させてしまっているのである。
私はこれまで、「アシンメトリ現象」における背骨のズレの影響は、末梢神経のうち、知覚神経と運動神経の範囲でしか言及してこなかった。しかし脳神経との関わりが密接であることが次第にわかってきたのだ。これはモルフォセラピーの実践者なら、体験的に気づいていた人もいるだろう。
だが上述の疾患群は、病院での治療では決め手に欠けていた。従って潜在的な患者数は増える一方だったはずだ。もし仮に「アシンメトリ現象」が脳神経にも影響しているのなら、モルフォセラピーによる頭蓋や頸椎のズレの矯正によって、脳神経が関与している疾患に直接アプローチできることになる。今後はこのことをイメージしながら、さらに検証を重ねていきたいと思っている。(花山水清)
(※)脳神経は、12対の末梢神経(嗅神経・視神経・動眼神経・滑車神経・三叉神経・外転神経・顔面神経・内耳神経・舌咽神経・迷走神経・副神経・舌下神経)で構成されている。それらの神経は脳から直接出て、頭部や頸部、体幹へと伸び、視覚や聴覚、味覚などの感覚を担い、顔の筋肉を制御したり、腺を調節したりもする。
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