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2023年05月03日 10時00分

側弯症冤罪事件! それは本当に側弯症の症状なのか?

カテゴリー: アシンメトリ現象

先ごろ、半世紀以上にわたって争われてきた冤罪事件が、事実上の決着に近づいたことで話題になっていた。冤罪とは、たまたま事件現場に居合わせただけなのに、犯人に仕立て上げられてしまう、いわゆる「無実の罪」である。


日本の司法では、一度刑が確定してしまうとなかなか再審には至らない。別に司法の世界でなくても、ちょっとした誤解が解けなくて苦労することはよくある。実は病院で診断される病気のなかにも、こういった冤罪事件に似たようなことが多いのだ。


以前、70代の女性Kさんから、側弯症についての相談を受けた。彼女は背中の一部と足くるぶしに痛みが出て、整形外科を受診していた。そして検査の結果、側弯症だと診断され、今出ている痛みも、側弯症の症状だと説明された。そのうえ、すぐ側弯の手術をしなければ、この先、歩けなくなるといわれたのだという。


いきなり手術だといわれたら、だれでも不安になるだろう。医者から「歩けなくなる」とまで断言されれば、手術を断るわけにもいかない。しかし手術しなければ、本当に歩けなくなるのか。手術以外に方法はないのか。疑問がわいてくるのも当然だ。


そこで私に相談に来られたのだが、そういう疑問があれば、直接医者に聞くべきであることはいうまでもない。ところが診察室では、患者からの質問を受け付けるような雰囲気ではなかった。これまたよくあることだろう。


そもそも側弯症は、思春期のころに発症することが多い疾患である。それが彼女のように70代にもなってから、急に側弯症になるとは考えにくい。しかもその年になるまで、何の症状もなくふつうに暮らしてきたのに、それが急に悪化して歩けなくなったりするものだろうか。


もちろん側弯そのものは手技で治せるものではないが、とりあえず彼女の背中を見せてもらうと、それほど極端な側弯ではなかった。むしろもっと弯曲がすごい人ならいくらでもいる。しかし弯曲が軽微だからといって、医者でもない私が「手術しなくてよい」ともいえない。


一般の人には、まっすぐであるべき背骨の描くラインが、大きく弯曲している「側弯」に対して、一つ一つの椎骨が正しい位置からズレる「背骨のズレ」とのちがいはわかりにくいかもしれない。だが側弯症の場合は、椎骨そのものが変形して、体の中心軸が大きく弯曲しているのである。また一度骨が変形してしまうと、整形外科でも治すことはできない。したがって整形外科では骨の変形を治すのではなく、弯曲した背骨の中心軸を、手術によってまっすぐに近い形に矯正するのである。


そこで問題となるのは、背骨の弯曲を手術で矯正したら、Kさんの背中やくるぶしの痛みも一緒に消えるのか、ということだ。彼女はこの点だけでも、その医師に聞いてみるべきだった。もし症状が消えることが確約できないのであれば、Kさんがその手術の是非を判断する手がかりになるはずだ。


ただしモルフォセラピー協会の会員なら、ここまでの話を聞いただけで、彼女の症状は第12胸椎と第1腰椎あたりのズレが原因ではないかと察しがつくだろう。実際、彼女の背骨は大きくズレていた。そのズレた椎骨を、手技によって正しい位置に戻しただけで、その場で明らかに症状が軽減したのである。


こうなると、彼女の痛みは側弯症によるものではなく、背骨のズレによる症状だったことがわかる。やはりこれは、側弯症に対する冤罪事件だったのだ。


似たような冤罪は、モルフォセラピー協会の会員なら、度々見聞きしているだろう。つい最近も、協会に側弯症の少女の症例報告があった。この女の子は病院で側弯症だと診断されていたが、息を吸うだけで背部の痛みが増し、ジャンプすると子宮のあたりにも痛みが走っていたのである。


ところがモルフォセラピーによる背骨のズレの矯正で、呼吸の際の痛みが楽になり、他の部分の痛みも解消した。おまけに便通まで良くなったという。それならば、症状の原因は単なる背骨のズレだったのだから、側弯症とは全く関係がなかったことになる。こういった症例を数多く目にしていると、側弯症であることが、人体に何らかの不都合を生じるものなのかすら疑わしくなってくる。


たとえば2008年にオリンピックの陸上競技で、金メダルを獲ったウサイン・ボルト選手も、側弯症であることは有名だ。彼は手術など受けないまま、努力によって飛び抜けた成績を残したのである。もし彼が手術を受けたとしても、必ずしも良い結果になったかどうかはわからない。まして特別な競技者でもない一般の人ならどうだろう。よほど極端な変形でもない限り、側弯であることが日常の運動機能に、重大な影響を与えるとは考えられないのである。


側弯症は古代から存在していたようだが、1970年ごろまでは一般の話題になることはなかった。ところが1980年代の終わりあたりから、徐々に側弯症が話題になることが増えた。同じころ、腰痛などの体性痛が大人だけでなく子供にも増え始めていた。これらの症状の多くは、背骨のズレによるものだったはずだ。


しかし当時も今も、医師たちは「背骨がズレたせいで症状が出る」とは考えない。そこで、その場に居合わせただけの側弯を、都合よく犯人に仕立て上げたのではないか。


また、1970年代に公害問題が叫ばれていたころ、連日のように背骨の曲がった魚が発見され、公害のせいだと報道されていた。しかし後から検証してみたら、魚の背骨が曲がっていたのは、出荷の積み込みの際に押されて変形したためだった。決して重金属などの公害の影響ではなかったのだ。マスコミが頻繁に話題にしていたから、急激に増えたように見えただけだったのである。


では実際のところ、側弯症の症状だといわれるもののなかに、どれほど背骨のズレによる症状が含まれているだろうか。症状のほとんどが背骨のズレによるものだとわかれば、側弯症が疾患として成り立たなくなる可能性すらある。それでも曲がっていることが問題だというのであれば、ストレートヘアなら正常で、カーリーヘアなら異常だといっているようなものだと思う。私たちは側弯症の冤罪が晴れるその日まで、さらに検証を重ねていくべきなのだろう。(花山水清)


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