ジョッキでビールが飲めない頚椎のズレ
あるとき、ジェット・リーのアクション映画を観ていたら、彼の首が中心軸から大きくズレているのが目についた。町中でも首のズレている人はちょくちょく見かけるが、彼ほど大きくズレている人はなかなかいない。やはりアクション・スターである分、一般の人よりも激しい衝撃を受けてズレてしまったのだろう。あれではアクションどころか、日常生活も不便なはずだ。
人の首の部分は、服で隠れていないから観察しやすい。頚椎や鎖骨のズレはもちろん、胸鎖乳突筋のこわばりや甲状腺の腫れなどからも、即座に相手の健康状態がわかる。また頚動脈に軽く触れてみることで、脈拍の強さや速度、脈を打つタイミングの左右のちがいからは、循環器の状態まで把握できる。
先日も、ある女性の頚動脈に触れると、左側が全く脈を打っていないので驚いた。第7頚椎のズレのせいで、左側の頚動脈の脈拍が弱くなることは珍しくないが、拍動が全く感じられないのは初めてだった。
通常なら、その場で頚椎のズレを矯正して症状の変化を調べる。しかしこの女性の場合は、動脈硬化など何らかの循環器の問題かもしれない。そうだとしたら、この状態での矯正は危険だと判断して、まずは病院で検査を受けてもらうことにした。
ところが検査の結果では、循環器には何の問題も見つからなかったのである。それなら原因の候補として残されるのは、頚椎のズレということになる。そこで、ズレている第7頚椎を矯正してみると、弱いながらも脈を打つようになった。
他にも、第7頚椎のズレはさまざまな悪さをすることがある。たとえば、左側の耳閉と鼻詰まりに悩まされている男性がいた。この症状だけなら、ふつうは第1、第2頚椎あたりのズレが原因である。
もし耳閉や鼻詰まりで病院を受診し、重症であればステロイドの集中投与が行われる。ところが彼はある難病の治療中だったので、すでにステロイドを使用していた。そういう患者にこのような症状が出るのは、医師からみてもふしぎだったらしい。
また耳鼻科で耳閉を検査すると、耳には水が溜まっていることが多い。そのため治療として鼓膜切開を受ける。しかし彼の耳には水も溜まっていなかった。こうなると何をどうしたらよいものか、病院では治療しあぐねていたのである。
そんな説明を彼から聞いたので、調べてみると第7頚椎が大きくズレていた。つまり彼の症状は第1、第2頚椎のズレではなく、通常とちがって第7頚椎のズレが原因だったのだ。
第7頚椎がズレると左の頚動脈を圧迫し、先の女性のように動脈の拍動に影響する。また頚動脈だけでなく頚静脈も圧迫されるので、うっ血状態を引き起こして耳閉や鼻詰まりになるのである。
さらに第7頚椎のズレによって、左肩から腕に向かって何らかの症状が出ることもある。彼にたずねてみると、やはりずっと左肩に違和感があったという。
こういった一見すると単純な耳閉と鼻詰まりであっても、左側に症状が出ているなら、第1+第2頚椎か、第7頚椎のどちらかのズレが原因となる。第1+第2頚椎のズレでは、耳や鼻の他に頭痛やめまいの症状も一緒に現れる。一方、第7頚椎のズレであれば、頭痛やめまいではなく、左肩や腕に症状が現れるのである。
そして第7頚椎がズレている人は、頭を後ろに倒せなくなるのも典型的な症状だ。そのためみな一様に、「ビールをジョッキで飲めなくなった」といって嘆いている。この状態で整形外科を受診すると、ストレートネックだと診断される。ところが彼らはもともとストレートネックだったわけではない。頚椎がズレた状態が、形としてストレートネックに見えるだけなのだ。したがってそのズレさえ治せば、ちゃんと頭を後ろに倒せるようになる。
実は病院の診断では、このように原因と結果が180度逆転した話が多い。原因と結果をとりちがえていれば、症状が解決しなくて当然である。しかも頚椎のズレという認識がないと、その症状が解決できないだけでなく、大変危険な場合もある。
病院では気楽に血流改善薬を処方しているが、頚椎のズレによる血流阻害は、水道のホースが折れ曲がって水が出にくくなった状態なのである。そんなところで急に水圧を上げれば、水の出は改善されてもホースが破れてしまう。それと同じことが脳の血管で起きれば脳出血となる。しかしこうして脳出血になっているのだとしても、だれもその原因に気付かずにいるだけなのだ。
確かに頚椎のズレに対する矯正は、モルフォセラピーの施術者としてもかなり慎重を要する。だから二の足を踏むこともあるだろう。だがその影響が大きいゆえに見過ごしにもできない。やはり十分に患者の状態に配慮した上で、この夏こそジョッキでビールが飲めるようにしてあげたいものである。(花山水清)
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